大晦日の晩、男鹿半島の集落に雪が降る。除夜の支度がすんだ頃、戸を激しく叩く音がして、それは家に入ってくる。鬼の面、藁のケラミノ、手には木の出刃包丁。「泣く子はいねがー」。年にいちどだけ、山から神が降りてくる晩である。
ナマハゲは鬼ではない。正月に訪れて災いを祓い、幸をもたらす来訪神である。名の由来は「ナモミハギ」——囲炉裏に長くあたって手足にできる火斑(ナモミ)を剥ぎ、怠け心を戒めることから来ている。家の主人は正装でナマハゲを迎え、酒と膳でもてなしながら、この一年の家族の様子を語る。子どもを脅かす行事に見えて、その実体は、集落の一年を締めくくる対話の儀式である。
泣く子はいねがー、親の言うこど聞がね子はいねがー。
1978年に国の重要無形民俗文化財となり、2018年には「来訪神:仮面・仮装の神々」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。しかし行事の実態は静かに縮んでいる。男鹿の百四十八の集落のうち、平成の間だけで三十四の集落が行事をやめた。2025年の大晦日にナマハゲが歩いた町内は七十一。ナマハゲに扮する青年がいない集落から、順に灯が消えていく。
それでも男鹿は続け方を探している。二月の「なまはげ柴灯まつり」が観光の入口となり、なまはげ館が面とケラミノを伝え、集落の外から担い手を迎える試みも始まった。大晦日の晩にだけ現れる神を、一年かけて支える半島である。
You can claim official stewardship of this page — supervise the content, update yearly records, and list experiences. The festival keeps the reins.
Contact us to claim this page →