The Night the Devils Run
アルプスの谷あいで、鎖と鈴を鳴らして悪魔が駆ける。子どもを戒める冬の来訪神は、いま担い手の高齢化に直面している。
十二月のはじめ、日が落ちると谷は一変する。松明の火に照らされ、木彫りの面をかぶり毛皮をまとった「クランプス」たちが、鎖と牛の鈴を鳴らしながら通りを駆けてくる。悪い子を戒めるために聖ニコラウスに従う来訪神——その姿は恐ろしくも、どこか懐かしい。
01
面の下にいるのは、隣人だ
面をかぶるのは村の若者たちだ。ひとつの面は何十年も受け継がれ、彫り師の技とともに家から家へと渡っていく。だが近年、若い担い手は減り、いくつかの隊(パス)は存続の岐路に立たされている。
面をかぶる者がいなくなれば、悪魔は谷から消える。そのとき失われるのは、恐怖ではなく、冬を越えるための物語だ。
祭りを訪れることは、その物語の担い手をひとり増やすことでもある。松明のひとつ、鈴のひと振りが、来年の夜を灯し続ける。